2011年4月16日土曜日

やがて上司になるあなたへ(3−3) 会議は一種類ではない: 伝達、報告、説明

次の3つ「伝達」「報告」「説明」には、話す人と聞く人とがいて、情報の流れに方向があります。


「伝達」は、決まったことを伝える場ですから、意見を言う権利は誰も持っていません。
伝達の前提は、会議の場に上下関係があるということです。上司のあなたが上であり、部下は下です。そして、上司のあなたは、部下に意見を述べさせてはなりません。部下に許すのは、伝達の内容を理解するための質問だけです。そして、あなたは、すべての部下の質問に答える義務があります。
伝達を成功させるためには、上下関係を明示するために、部下全員を同じ方向に向かせ、あなたは彼らと正面から向き合う形をとるのがよいでしょう。私は、このような場合、部下の座る位置まで、はっきりと指定します。
会議の終了は、部下の質問が終ったときです。

「報告」は、「伝達」とは逆に、部下が話し上司が聞く場合です。上下関係もあります。聞き手にとって価値のある情報の伝達が目的です。その意味で、報告の価値は、「悪いニュースは、よいニュース。」などメタな意味である場合も少なくないにしても、予めあなたと部下の間で共有されていなければなりません。別の言い方をすると、あなたは、部下が報告すべき事項を、事前に彼らに明示しておかなければならないのです。
上司のあなたは、部下からの情報を活用して判断を下すことになりますから、部下には、事実と意見を明確に分けるよう求めるべきです。通常は、報告の場合には事実のみを話すようにと指導した方がよいように思います。

部下の意見を参考に聞くのは、「ヒアリング」です。ヒアリングの際に、私がよく使う台詞は、「君はどうしたい?(笑顔)」です。ヒアリングは、報告の方向を逆にしただけではありません。あなたが部下にヒアリングをすべき事項を、事前に部下が上司のあなたに明らかにすることはないからです。つまり、部下の意見を聞きたければ、あなたが積極的に部下の言葉に耳を傾けなければならないということです。そして、部下の意見を聞き出すという性質上、人事的な上下関係を前面に出すべきではありません。ちなみに、 部下が主体的に、上司に意見を言うのは、「具申」です。

「説明」は、詳しく物を知っている人が、詳しくない人に情報を伝えることです。これにも方向は明確にありますが、「伝達」「報告」と説明が違うの点は、上下関係がないことです。説明の目的は、上司の承認を得るための場合もあれば、部下への指示を下すための環境づくりの場合もあります。いずれの場合にも、説明は「話し手だけがそれを知っている」会議であり、「聞き手が流れる情報の価値を事前に知っている」報告やヒアリングとは大きく異なります。聞き手にはどうしてもストレスがかかります。ですから、説明には十分な時間を確保し、相手のメンタルコンディションにも配慮した方がいいでしょう。
また、説明は上司承認、指示伝達に付属するものと考えられがちですが、私の経験からは、説明自体は独立した会議と考えた方がいいと思います。というのは、参加者の情報ギャップを埋めることと、決める(承認/指示)こととは、独立しているコミニュケーションプロセスだからです。私は、「話は出尽くしたね。」といった言葉を挟んで説明の終りを宣言し、「じゃあ、決めようか。」と言って決定プロセスに移るようにしています。

報告、ヒアリング、説明について、何を細々とと感じる方もいらっしゃると思いますが、身近にある盛り上がらない会議を思い出してみて下さい。上司部下の間で、報告すべき内容が合意されていないために、短く終るはずの報告がいつの間にか長々とした説明になっている会議や、話し手がしゃべりたいことだけを”報告”して何のための会議かが分からなくなっている会議が沢山ありませんか。私は、上司が報告、ヒアリング、説明を厳密に運用することで、会議時間もみんなのストレスも随分減ると思います。

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