2011年4月26日火曜日

やがて上司になるあなたへ(7) マネージャとリーダーと

(次次回投稿予定)

やがて上司になるあなたへ(6) 報告書は誰のものか

報告書は、仕事の文書の典型で、多くの場合成果そのものです。このため、上司には、部下が分かり易い報告書を作成できるよう指導することが求められます。

よく行われる指導が、いわゆる「赤を入れる」ですが、これはお勧めできません。なぜなら、「赤が入る」度に、報告書が部下のものからあなたのものへと変わるからです。

さらに、まずい点がいくつかあります。第一に、そもそもあなた自身がそれほど優れた文章を書ける訳ではないということです。第二に、報告書に書くべき内容は、部下の頭の中にあり、その内容をあなたが完全に理解しているとは限りらないということです。しかも、目の前にあるのは、不完全な、場合によっては言うべきことが書いていないかもしれない、部下の下書きにすぎないのですから。第三に、部下の文体とあなたの文体は違うでしょうし、それぞれの単語をどういう意味で使うかも、部下とあなたで違うでしょう、等等。

結局、部下の報告書に、あなたが直接手に入れると、全面的な書き直しをあなたがするか、パッチワークのような読みにくい報告書になるしかないのです。

では、どうするか?

実は、すごく簡単で、とても有効な方法があります。それは、部下の報告書を読んで、分かりにくいところを指して、「ここで、何を伝えたいの?」と聞くのです。報告書を書く段階になっているのですから、ほとんどの場合、部下は、短い適切な言葉で答えてくれるはずです。そして、あなたは部下に言うのです、「そう書いた方が分かり易いよ。」と。部下の口頭での答えは文章としては荒いかもしれませんが、それは後で簡単に直せることなので気にせずに、話したままを文章に一度書かせれば、あっという間に分かり易い報告書ができあがるはずです。あとは、細かい表現を直すように指示すれば終りです。


この方法のよいところは、
1)報告書の中身はすべて部下の言葉でできていること
2)あなたの文章力が少々低くても適切な指導ができること
3)赤入れと比較して、時間がほとんどかからないこと
です。特に、1)によって、部下がこの報告書は自分のものだと思えるのが、大切な点です。

応用編としては、このQ&Aを、報告書全体の構造を明確にすることを意識して、全体→部分へと進めれば、分かり易い全体構成とポイントの はっきりした表現の両方を手にできます。ただ、全体を見る視点と、部分を見る視点が混ざりますので、部下との話術は少し難しくなります。 この当りは、プレゼンテーションのまとめかたの項で、もう少し詳しく書きます。


当然のことですが、この方法でも報告書が分かり易くならない場合があります。ひとつには、状況が複雑で何を報告すべきか不明確である場合、他には、部下の考えがまとまっていない場合等です。前者の場合には、備忘録としてとにかく書面にする価値があるなら、備忘録であることを明示して、分かりにくいままの報告書にすべきだと思います。後者の場合には、原則として、報告書の作成を中止し、部下の仕事の進捗を待つべきです。

最後に、この項では、それほど文章力がなくても部下の報告書の指導ができることを書きましたが、上司であるあなたは高いレベルの文章力を持っていた方がいいことは言うまでもありません。最低限の教養として、木下是雄先生の名著、「 理科系の作文技術 」(中公新書 (624)) を一通り学ぶといいと思います。

2011年4月25日月曜日

やがて上司になるあなたへ(5) 一番やりがいがあり、面白い仕事こそ、部下に与えましょう

あなたの上司が一番やりがいがあり面白い仕事を担当し、あなたにはその周辺のやりがいが一段劣る仕事ばかりが与えられるとしたら、どう感じるでしょうか?力の差がある以上しかたがないと諦めることができればいい方で、普通は「上司はずるい。」と感じるのではないでしょうか。

このシリーズの最初に、上司の仕事は、部下に価値のある仕事を与え続けることといいました。あなたが上司として十分な力をもっているのであれば、今一番やりがいのある仕事を部下に与えても、あなたは次のもっとやりがいのある仕事を生み出せるはずです。

ならば、部下が、特に新しい部下が来た時には、あなたが一番やりたい仕事を部下に与えましょう。それはあなたから部下への明確な期待の表明になります。それによって部下のモチベーションは、確実に高まります。最高にやりがいのある仕事を、自分ではなく、部下に与え続ければ、あなたの率いるチームのモチベーションは常に高く保たれます。

逆に、一段劣る仕事ばかり与えて、口先で「情熱を持って仕事をしろ。」と言ったところで、部下がついてくるはずはありません。部下はしらけるだけです。

もちろん、あなたには新しい仕事を考えるというしんどい仕事が常に残りますが、モチベーションの低い部下を率いて成果を上げようと虚しい努力をするより、それはずっと生産的な仕事です。

2011年4月23日土曜日

やがて上司になるあなたへ

この書込みは、これまでに4項目書いてきましたが、最終的には40項目くらいになる予定です。

ゆっくり書いてゆきますので、よろしくお願いします。

2011年4月19日火曜日

選挙で政権交代ということは簡単ではない

日本では、選挙で首相が変わるのが普通ですし、よくニュースに出てくる、いわゆる先進国でもそれは当然のことなので、「選挙で政権交代」はつい当たり前のことと思ってしまいます。

しかし、世界中を見回せば、決して当たり前ではありません。西ヨーロッパ諸国、旧大英帝国を構成していた国々を除けば、日本を含めたわずかな数の国々だけが、選挙での政権交代に成功しているのです。韓国にしても、政権を離れた前大統領が裁判にかけられなくなったのは最近です。多くの国が、激しさは別にして、今中東で起きているような形で政権が変わっているのが現実です。そうした中、マレーシアのマハティール首相が非常な長期政権の後に動乱もなく首相の座を離れたことは、驚くべきことです。この事実は、マハティール氏が非常に有能でかつ高潔な人格を兼ね備えた人物であることを示しています。

マハティール氏のような例外的な人物を得た国か、長く安定した国かでないと、人々にとって選挙の結果を受け入れることは決して容易ではないのです。言葉を変えれば、民主主義は簡単には根付かないものだということです。

やがて上司になるあなたへ(4): チームを最適化していけない

あなたが、何人かの部下からなるチームを率いているときに、沢山の成果を効率よく上げたいと思うと、部下の適性に最もあった仕事を一人一人に与えたくなると思います。

しかし、チームをそのように最適化することは、本当に短期の終りの見えている仕事をするとき以外は避けるべきです。

チームを最適化していけないのです。

理由は大きく二つあります。一つは、部下は得意なことをするだけなので、その仕事を通じてほとんど成長しないからです。もう一つは、部下がお互いの仕事に興味を持たなくなり、チーム内のコミュニケーションも減り、チームワークが崩れてゆくからです。短期の終りの見ている仕事をしているときなら、仕事を終わらせることそのものがチームのモチベーションとなることもありますが、その場合でも、部下の成長はほとんど期待できません。

チームを最高度に最適化した状態を100とすれば、80位の状態を保つのがベストであるように思います。それぞれの部下には、その特性にあった仕事を主に与えるものの、少し苦手もしくは他のメンバーの業務のサポートを織り込むといった形でのチーム運営の方が、メンバー間の相互啓発も活発になり、中長期的にはチームの成果は大きくなります。

2011年4月16日土曜日

やがて上司になるあなたへ(3−4) 会議は一種類ではない: 交渉

「議論」から「説明」までは、いずれも会議の参加者の間に、原則として利益相反はありませんでした。

「交渉」は、会議の参加者が、自分たちの間に利益相反あることを共通認識としている会議です。当然、事前に同意できるゴール(正解といっていいかもしれません)はありません。(2)でお話したように、上司のあなたは、職場の会議/コミュニケーションに交渉が忍び込まないよう細心の注意を払う必要があります。

交渉をどう進めるべきかは、基本的には、相手へ敬意を基本において、シンメトリックな合意、要するに相手と自分の立場を入れ替えても損得に変わりはない合意を目指すことが大切です。

フェアな交渉においては一人勝ちはあり得ません。
一人勝ちを目指せば、裏で恨みか不信を買うだけです。自分が少し損をした、その位がちょうどシンメトリックな合意と思った方がよいでしょう。その他のことは、世の中に交渉術を謳う本が沢山ありますので、それをご参照下さい。

やがて上司になるあなたへ(3−3) 会議は一種類ではない: 伝達、報告、説明

次の3つ「伝達」「報告」「説明」には、話す人と聞く人とがいて、情報の流れに方向があります。


「伝達」は、決まったことを伝える場ですから、意見を言う権利は誰も持っていません。
伝達の前提は、会議の場に上下関係があるということです。上司のあなたが上であり、部下は下です。そして、上司のあなたは、部下に意見を述べさせてはなりません。部下に許すのは、伝達の内容を理解するための質問だけです。そして、あなたは、すべての部下の質問に答える義務があります。
伝達を成功させるためには、上下関係を明示するために、部下全員を同じ方向に向かせ、あなたは彼らと正面から向き合う形をとるのがよいでしょう。私は、このような場合、部下の座る位置まで、はっきりと指定します。
会議の終了は、部下の質問が終ったときです。

「報告」は、「伝達」とは逆に、部下が話し上司が聞く場合です。上下関係もあります。聞き手にとって価値のある情報の伝達が目的です。その意味で、報告の価値は、「悪いニュースは、よいニュース。」などメタな意味である場合も少なくないにしても、予めあなたと部下の間で共有されていなければなりません。別の言い方をすると、あなたは、部下が報告すべき事項を、事前に彼らに明示しておかなければならないのです。
上司のあなたは、部下からの情報を活用して判断を下すことになりますから、部下には、事実と意見を明確に分けるよう求めるべきです。通常は、報告の場合には事実のみを話すようにと指導した方がよいように思います。

部下の意見を参考に聞くのは、「ヒアリング」です。ヒアリングの際に、私がよく使う台詞は、「君はどうしたい?(笑顔)」です。ヒアリングは、報告の方向を逆にしただけではありません。あなたが部下にヒアリングをすべき事項を、事前に部下が上司のあなたに明らかにすることはないからです。つまり、部下の意見を聞きたければ、あなたが積極的に部下の言葉に耳を傾けなければならないということです。そして、部下の意見を聞き出すという性質上、人事的な上下関係を前面に出すべきではありません。ちなみに、 部下が主体的に、上司に意見を言うのは、「具申」です。

「説明」は、詳しく物を知っている人が、詳しくない人に情報を伝えることです。これにも方向は明確にありますが、「伝達」「報告」と説明が違うの点は、上下関係がないことです。説明の目的は、上司の承認を得るための場合もあれば、部下への指示を下すための環境づくりの場合もあります。いずれの場合にも、説明は「話し手だけがそれを知っている」会議であり、「聞き手が流れる情報の価値を事前に知っている」報告やヒアリングとは大きく異なります。聞き手にはどうしてもストレスがかかります。ですから、説明には十分な時間を確保し、相手のメンタルコンディションにも配慮した方がいいでしょう。
また、説明は上司承認、指示伝達に付属するものと考えられがちですが、私の経験からは、説明自体は独立した会議と考えた方がいいと思います。というのは、参加者の情報ギャップを埋めることと、決める(承認/指示)こととは、独立しているコミニュケーションプロセスだからです。私は、「話は出尽くしたね。」といった言葉を挟んで説明の終りを宣言し、「じゃあ、決めようか。」と言って決定プロセスに移るようにしています。

報告、ヒアリング、説明について、何を細々とと感じる方もいらっしゃると思いますが、身近にある盛り上がらない会議を思い出してみて下さい。上司部下の間で、報告すべき内容が合意されていないために、短く終るはずの報告がいつの間にか長々とした説明になっている会議や、話し手がしゃべりたいことだけを”報告”して何のための会議かが分からなくなっている会議が沢山ありませんか。私は、上司が報告、ヒアリング、説明を厳密に運用することで、会議時間もみんなのストレスも随分減ると思います。

やがて上司になるあなたへ(3−2) 会議は一種類ではない: 議論

まず、「議論」です。議論には、暗黙の前提があります。それは、第一は、会議に参加している人全員が、「答えが欲しい。」と思っている一つの問題(=議題)があるということです。第二は、議論に参加している誰1人、その問題について答えを持っていないということです。別の言い方をすれば、自分の答えに何か欠けているものがあると、みんな感じているということです。これが、議論が成立する条件です。
当然のことですが、議論においては、情報の流れに一定の方向はありません。参加者全員で、知恵を出し合って答えを見つけるのが議論です。
それゆえ、参加者には次のようなことが求められます。議題となっている問題への理解と、一定の専門知識を持っていること。個人として意見を言うこと(意見のない参加者は、役に立っていないので、決して歓迎されません)。問題に関係のないことは言わないこと(無関係な発言は、議論を混乱させたり、時間の無駄遣いになるのでヒンシュクを買います)。問題を解くことと関係のない/役に立たない会社内の上下関係に触れないこと。
その結果、議論に分類される会議を成功させるためには、まず、話し合う問題を明確にし(ゴールの設定)た上で、参加者が平等に意見が言える雰囲気を作るように運営することが大切になります。机を使う場合は、円卓もしくは変形机がいいでしょう。私は、黒板/白板に問題を書き出して、机を使わず参加者全員で同じ方向を向いて議論する形が好みです。
上司であるあなたは、ふたつの方法をとることができます。第一は、ゴール設定をした後は、司会として議事の運営に徹する方法、第二は自分の意見を否定されることをも歓迎する、部下と同じ専門家として参加する方法です。
会議の終了は、問題が解けたときか、すくなくとも今解けないと分かったときです。

2011年4月5日火曜日

東日本大震災報道に思う

今、日本は、米国を初めとする多くの国の支援を受けていますが、それについての報道があまりに少ないのではないかと、感じています。

特に、米国、特に米軍の支援は、事実として特筆に値するものだと思います。

確かに沖縄を初めとする各地で米軍の兵士が問題行動を起こしている事実はあるにしても、私たち日本人は、今回の震災において彼らがどれ程私たち日本人のために骨を折ってくれているかを知ることは大切だと思います。

私たちがフェアであることを示すためにもです。